「明石家さんちゃんねる」という番組の「さんまの美女探し会社訪問」という企画で、さんまさんと一緒にある有明飲料メーカーにロケに行ったことがあります。
ちなみに、その企画は、有名企業の社内を回りながら、美人女性社員を紹介するというものでした。
男女問わず、多くの視聴者は、美人にも、他の会社の内部にも興味がありますし、撮影協力してくれる会社にとってはPRになります。
まさに一石三鳥の人気企画でした。
さて、その飲料メーカーでは、社長が直々にご出演くださり、さんまさんとトークをすることになりました。
そのトーク中に、社長は謙遜気味にこう言ったのです。
「うちは、業界シェア第4位ですから・・・・・・」
この一言で、周りにいた社員の方々も自嘲気味な雰囲気になりました。
すると、さんまさんはすかさず、こう切り返したのです。
「でも、味は宇宙一でっしゃろ!」
社内は一気に笑いに包まれました。
さんまさんは、場の空気を一瞬で変えたのです。
「味が宇宙一かどうか」なんて、測りようがありません。
それこそ、当代一のホラ吹き男、さんまさん流の「ホラ」です。
しかし、「宇宙一」という言葉のチョイスには、ただの「ホラ」にとどまらない、さんまさん流の温かみを感じます。
おそらくさんまさんは、次のようなメッセージを込めていたのではないでしょうか。「あなたの会社の従業員は、みんな自分たちの商品にプライドを持って、それこそ宇宙一の味だと信じて、日々仕事に励んでいるんでしょ! それなら、日本国内でのランキングなんて、小さい! 小さい!全然、関係あらへんがな」と。
僕は、相手の気持ちを高揚させる、このような会話にこそ、コミニケーションの本当の価値があると思います。
相手の言葉にかぶせつつ、相手をさらにいい気分にさせてしまう。
これができる人が、本当に頭の良い人なのではないでしょうか。
さんまさんのような気の利いたセリフを言えるようになるのは、なかなか難しいかもしれませんが、彼の発言にはある共通点があります。
「常に相手の気持ちになって考えている」のです。
相手の気持ちになり、「こう言われると喜ぶだろうな」と思ったことを、二言目に付け足したり、会話の返しに使ったりしているわけです。
普段の会話で、僕たちはつい、自分の伝えたいことばかり言ってしまいがちです。
「これ、お得なんですよ」と、一見相手に利益のあるような発言をしていても、実は相手にとっては全くお得ではなく、発言者にとってだけお得であると言うことも、よくあります。
「伝えたい」という欲望や感情を一度脇に置いて、伝えられる側のことを考えてから発言する。
そう意識するだけで、相手の伝わり方がずいぶん変わるのではないかと思います。(角田陽一郎:「好きなことだけやって生きていく」という提案)
価値あるコミュニケーションとは、こういうことだと納得してしまうエピソードです。思いやり、相手への想いは目に見えないですが常に心に存在しあふれているから、それが相手へ届いて素晴らしいコミュニケーションとなり、周りへもよい場が広がり創造されていくのだと思います。自分自身のことで精一杯すぎると相手や周りへ、ベクトルが向かず、狭く閉じてしまいます。でも、決して自分にベクトルを向けることが悪いわけではなく、自分に向けたベクトルと同じだけ周りにもベクトルを向けられたなら、きっと世界は閉じず、つながりを持ち、どこまでも広がると思います。
いつも豊かで、余裕があって、楽しくワハハと笑い飛ばせる、さんまさん。心軽やかに捉われなく自由な振る舞いが魅力的です。