さんまさんの会話の特徴は、「常に二言多い」点にあります。
一言ではなく、二言多いのです。
かつてさんまさんが司会を務め、一般の女性たちと恋をテーマにトークをする「恋のから騒ぎ」という深夜番組がありました。
その中でさんまさんは、出演者の女性たちのエピソードを聞きながら、ボロクソに悪口を言います。
「まったく男にだらしがないなあ」「そのセンスのない服はあかんやろ」「性格キツイわ!」
しかし、さんざん悪口を言ったあとで、決まってこう付け足すのです。
「そんなにかわいいのに」
この二言目が足されることで、それまでのどんな悪口も一瞬で帳消しになり、むしろ彼女たちの魅力を引き立てる褒め言葉になるのです。
言われた本人はもちろん、そばで聞いている人たちも、悪い気がしません。
笑いを生みつつ、その場がいい雰囲気になります。
その雰囲気の良さが、電波に乗って視聴者にも届いていたからこそ、「恋のから騒ぎ」はヒットしたのでしょう。
「一言多い」は、相手のダメなところを一方向から指摘するもので、ただの「文句」にすぎません。
その指摘を超え、反転して褒めるとこほまで持っていける言葉を、まったく違う方向から提示する。
それが、「二言多い」ということであると、さんまさんに教えられたのでした。
相手をムッとさせ、会話に引き寄せてから、褒める。
落差が大きい分、褒められたという感情は、より強くなります。
「〜なのに」という言い方も絶妙です。
あくまでも「自分の感想である」という雰囲気を出すことで、押しつけ感がなくなりますし、「自分が、その相手に対して興味を持っている」という印象を与えることもできます。
これが、「そんなにかわいいのに」ではなく「そんなにかわいいんだからさ」だと、どこか「注意している」ようなニュアンスが含まれるため、このセリフの魅力が半減してしまうでしょう。(角田陽一郎:「好きなことだけやって生きていく」という提案)
相手を思っての二言目、思いやりの心を感じます。
自分のことだけを話してしまったり、必要なことだけで終わってしまったりしがちですが。相手を思い、自分も相手も心地よくなるような、その会話を聞いた周りの人の心まで明るくなるような、そんな言葉を心がけていきます。