折衝(せっしょう)

ある患者さんと話しをしている時、その患者さんが現役時にされていた仕事の話しを伺いました。困難な仕事の一つに折衝という仕事があったそうです。
この患者さんは、大企業に勤められており、会社が大規模な施設、工場などを建てる時、その前にまずは地元住民の方や、海の埋め立て時には地元漁師の方へ説明を行って理解・了承を得る折衝という仕事をされていました。(了承が得られないと建築に取りかかる事ができないため重要な仕事)
折衝はかなり困難をともなう仕事で、建築に反対の方がみえると、話を聞いてもらえなかったり、怒鳴られたり、塩をまかれたりなどいろいろあったそうです。
何か自分に落ち度があったり、非があって塩をまかれるのであればまだしも、何も悪いことをしていないし、まったく歓迎されていない中、話を進めていかなければならない・・・・・
私だったら心が折れてしまいそうです。
この患者さん、何度も朝、仕事に行きたくない。仕事を辞めたいと思われたそうですが、その都度自分の心を奮い立たせ、粘り強く交渉を続けられたそうです。今、建っている巨大な工事や建築施設はこの患者さんの折衝のおかげかもしれません。
こんな困難な仕事を勤め上げられた患者さん、いつも明るくとても素敵な笑顔で、当に頭が下がります。

私自身、頭を抱えるような出来事や心が折れそうになることもありますが。この患者さんの話しを思い出すと、身が引き締まります。
人の表情に、その人の生き方が現れるという話を聞いた事がありますが、この患者さんの笑顔には困難に向き合い、受け入れ、しっかり乗り越えられた、強さ、大きさが伝わってきます。